『トランスフォーメーション第三宣言』のソースは、
旧約聖書 新共同訳 日本聖書協会

創世記41
 二年の後、ファラオは夢を見た。ナイル川のほとりに立っていると、
突然、つややかな、よく肥えた七頭の雌牛が川から上がって来て、葦辺
で草を食べ始めた。すると、その後から、今度は醜い、やせ細った七頭
の雌牛が川から上がって来て、岸辺にいる雌牛のそばに立った。そして、
醜い、やせ細った雌牛が、つややかな、よく肥えた七頭の雌牛を食い尽
くした。ファラオは、そこで目が覚めた。
 ファラオがまた眠ると、再び夢を見た。今度は、太って、よく実った
七つの穂が、一本の茎から出てきた。すると、その後から、実が入って
いない、東風で干からびた七つの穂が生えてきて、実の入っていない穂
が、太って、実の入った七つの穂をのみ込んでしまった。ファラオは、
そこで目が覚めた。それは夢であった。朝になって、ファラオはひどく
心が騒ぎ、エジプト中の魔術師と賢者をすべて呼び集めさせ、自分の見
た夢を彼らに話した。しかし、ファラオに解き明かすことができる者は
いなかった。
 そのとき、例の給仕役の長がファラオに申し出た。
「わたしは、今日になって自分の過ちを思い出しました。かつてファラ
オがしもべどもについて憤られて、侍従長の家にある牢獄にわたしと料
理役の長を入れられたとき、同じ夜に、わたしたちはそれぞれ夢を見た
のですが、そのどちらにも意味が隠されていました。そこには、侍従長
に仕えていたヘブライ人の若者がおりまして、彼に話をしたところ、わ
たしたちの夢を解き明かし、それぞれ、その夢に応じて解き明かしたの
です。そしてまさしく、解き明かしたとおりになって、わたしは元の職
務に復帰することを許され、彼は木にかけられました。」
 そこで、ファラオはヨセフを呼びにやった。ヨセフは直ちに牢屋から
連れ出され、散髪をし着物を着替えてから、ファラオの前に出た。ファ
ラオはヨセフに言った。
「わたしは夢を見たのだが、それを解き明かす者がいない。聞くところ
によれば、お前は夢の話を聞いて、解き明かすことができるそうだが。」
 ヨセフはファラオに答えた。
「わたしではありません。神がファラオの幸いについて告げられるので
す。」
 ファラオはヨセフに話した。
「夢の中で、わたしがナイル川の岸に立っていると、突然、よく肥えて、
つややかな七頭の雌牛が川から上がって来て、葦辺で草を食べ始めた。
すると、その後から、今度は貧弱で、とても醜い、やせた七頭の雌牛が
上がって来た。あれほどひどいのは、エジプトでは見たことがない。そ
して、そのやせた、醜い牛が、初めのよく肥えた七頭の雌牛を食い尽く
してしまった。ところが、確かに腹の中に入れたのに、腹の中にいれた
ことがまるで分からないほど、最初と同じように醜いままなのだ。わた
しは、そこで目が覚めた。
 それからまた、夢の中でわたしは見たのだが、今度は、とてもよく実
の入った七つの穂が一本の茎から出てきた。すると、その後から、やせ
細り、実が入っておらず、東風で干からびた七つの穂が生えてきた。そ
して、実の入っていないその穂が、よく実った七つの穂をのみ込んでし
まった。わたしは魔術師たちに話したが、その意味を告げうる者は一人
もいなかった。」
 ヨセフはファラオに言った。
「ファラオの夢は、どちらも同じ意味でございます。神がこれからなさ
ろうとしていることを、ファラオにお告げになったのです。七頭のよく
育った雌牛は七年のことです。七つのよく実った穂も七年のことです。
どちらの夢も同じ意味でございます。その後から上がって来た七頭のや
せた、醜い雌牛も七年のことです。また、やせて、東風で干からびた七
つの穂も同じで、これらは七年の飢饉のことです。これは、先程ファラ
オに申し上げましたように、神がこれからなさろうとしていることを、
ファラオにお示しになったのです。今から七年間、エジプトの国全体に
大豊作が訪れます。しかし、その後に七年間、飢饉が続き、エジプトの
国に豊作があったことなど、すっかり忘れられてしまうでしょう。飢饉
が国を滅ぼしてしまうのです。この国に豊作があったことは、その後に
続く飢饉のために全く忘れられてしまうでしょう。飢饉はそれほどひど
いのです。ファラオが夢を二度も重ねてみられたのは、神がこのことを
既に決定しておられ、神が間もなく実行されようとしておられるからで
す。このような次第ですから、ファラオは今すぐ、聡明で知恵のある人
物をお見つけになって、エジプトの国を治めさせ、また、国中に監督官
をお立てになり、豊作の七年の間、エジプトの国の産物の五分の一を徴
収なさいますように。このようにして、これから訪れる豊年の間に食料
をできるかぎり集めさせ、町々の食糧となる穀物をファラオの管理の下
に蓄え、保管させるのです。そうすれば、その食糧がエジプトの国を襲
う七年の飢饉に対する国の備蓄となり、飢饉によって国が滅びることは
ないでしょう。」
 ファラオと家来たちは皆、ヨセフの言葉に感心した。ファラオは家来
たちに、「このように神の霊が宿っている人はほかにあるだろうか」と
言い、ヨセフの方を向いてファラオは言った。
「神がそういうことをみな示されたからには、お前ほど聡明で知恵のあ
る者は、ほかにはいないであろう。お前をわが宮廷の責任者とする。わ
が国民は皆、お前の命に従うであろう。ただ王位にあるということでだ
け、わたしはお前の上に立つ。」
 ファラオはヨセフに向かって、「見よ、わたしは今、お前をエジプト
全国の上に立てる」と言い、印章のついた指輪を自分の指からはずして
ヨセフの指にはめ、亜麻布の衣服を着せ、金の首飾りをヨセフの首にか
けた。ヨセフを王の第二の車に乗せると、人々はヨセフの前で、「アグ
レク(敬礼)と叫んだ。ファラオはこうして、ヨセフをエジプト全国の
上に立て、ヨセフに言った。「わたしはファラオである。お前の許しな
しには、このエジプト全国で、だれも、手足を上げてはならない。」
 ファラオは更に、ヨセフにツアフェナト・パネアという名を与え、オ
ンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトを妻として与えた。ヨセフの威光
はこうして、エジプトの国にあまねく及んだ。
 ヨセフは、エジプトの王ファラオの前に立ったとき三十歳であった。
ヨセフはファラオの前をたって、エジプト全国を巡回した。
 豊年の七年の間、大地は豊かな実りに満ち溢れた。ヨセフはその七年
の間に、エジプトの国中の食糧をできるかぎり集め、その食糧を町々に
蓄えさせたのである。ヨセフは、海辺の砂ほども多くの穀物を蓄え、つ
いに量りきれなくなったので、量るのをやめた。
 飢饉の年がやって来る前に、ヨセフに二人の息子が生まれた。この子
供を産んだのは、オンの祭司ポティ・フェラの娘アナセトである。ヨセ
フは長男をマナセ(忘れさせる)と名付けて言った。
「神が、わたしの苦労と父の家のことをすべて忘れさせてくださった。」
 また、次男をエフライム(増やす)と名付けて言った。
「神は、悩みの地で、わたしに子孫を増やしてくださった。」
 エジプトの国に七年間の大豊作が終わると、ヨセフが言ったとおり、
七年の飢饉が始まった。その飢饉はすべての国々を襲ったが、エジプト
には、全国どこにでも食物があった。やがて、エジプト全国にも飢饉が
広がり、民がファラオに食物を叫び求めた。ファラオはすべてのエジプ
ト人に、「ヨセフのもとに行って、ヨセフの言うとおりにせよ」と命じ
た。飢饉は世界各地に及んだ。ヨセフはすべての穀倉を開いてエジプト
人に穀物を売ったが、エジプトの国の飢饉は激しくなっていった。また、
世界各地の人々も、穀物を買いにエジプトのヨセフのもとにやって来る
ようになった。世界各地の飢饉も激しくなったからである。